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そう・・・あの時お前は・・・

収監から
9年を過ぎた頃からだった
幸絵は俺を訪ねてくるようになった

母ちゃんと俺を
こんな目に合わせやがった
憎いお前らに逢いたくもない

だが
お前はそれから1年の間
毎週のように訪れては逢わない俺に
手紙を置いていきやがった

逢いたい・・・

一体なんなんだ・・・?
お前の真意が判らなかった

お前は手紙で一切
あの事件には触れてこなかった・・・
大好きだった
母ちゃんが死んだことにも触れず


俺の出所を待っている言葉だの
励ます言葉を繰り返す手紙を送ってきやがった

そして
出所一か月前に
幸絵が置いていった婚姻届

幸絵からの婚姻届

その時俺は
初めてお前に返事を返した・・・

義春からの返事

婚姻届けを貰って判った・・・
やっぱりそうだった・・・

結婚なんて・・・
期待させやがって
危うく騙されるところだった

手紙で俺を油断させて
期待した俺を
あのくそ親父と笑うつもりだったんだ!!

破かれた婚姻届

ざまあみやがれっ!
破り捨てた婚姻届をみれば
しくじったことに気付きやがるだろう

騙されるかよっ!!

そう思った
2日後だった・・・・。

信じて良いのか・・・?

刑務所の便所で
俺は・・・
俺は・・・
何度も何度も目をこすり

再び送られてきた
手紙と婚姻届けを
何度も何度も読んだんだ

婚姻届け再び

信じていいのか・・・?

本当は
本当は・・・
逢いたかったんだ・・・この一年間

だけど期待をしたら
裏切られるのが・・・
辛い目に遭うのがわかっていたから

逢ったなら
返事を書いたなら
きっと嘲笑われる・・・

期待をしてはいけない
期待をしたなら・・・

けれど
再び婚姻届が届いたとき
俺は・・・
俺は試そうと思った

”迎えに来るんだったら
  露出たっぷりで迎えに来いっ!”

3月の雪

「よし兄ちゃあぁぁぁんっ!」

お前は・・・

お前は来やがった・・・
3月の雪の中・・・

眩しいほどに明るい笑顔を
俺に向けて手を振っていた・・・

一緒に帰ろ・・・

俺は
お前に・・・
お前に目を合わせることができなかった・・・

”待って・・・
  待って・・・
   ね・・・よし兄ちゃん待って・・・”

待ってください・・・

あまりにもお前が
余りにもお前が変わっていたから・・・

俺は・・・
俺は信じても・・・
俺は信じてもいいのか・・・?

信じていいのか・・・幸絵

俺は
俺は本当にお前のことを・・・
幸絵
俺はお前と
お前と一緒に暮らしていけるのか・・・?

俺は俺は
お前を・・・
お前のことを・・・
好きになってもいいのか・・・

本当に・・・
本当にお前のことを・・・
愛しているのに・・・

あの時お前は・・・
お前は・・・
お前は俺を・・・

それが無ければ・・・

愛の報い

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ついさっきまで・・・

ほんの・・
ついさっきまで
坂井幸絵は勤め先である
哀玩ストアでレジを打っていた。

「こんにちわ、幸絵さん・・元気っ?」
「あっ・・いらっしゃいませっ、五十嵐さん。」

いらっしゃいませっ

隣町に新しくできたショッピングモールの
煽りを被っていた売り上げが
幸絵の入店以来
月を追う毎に持ち返してきていた。

「元気ですっ!」

「いいわね~っ・・・
  新婚さんは幸せそうでっ・・・!?」

「はいっとっても幸せですっ・・・
幸せもお売りしたいくらいですぅっ・・・うふふっ」

幸せですっ!

「ごちそうさまっ・・・うふふ・・じゃ、またねっ・・」

「はいっ
  どうぞ、お気をつけて・・・!
    またのお越しをお待ちしていま~すっ・・・!」

お待ちしております。。

清潔感溢れ
24歳になったばかりの若さから迸る
彼女の屈託のない
笑顔と明るさに客も店員も魅了されていた

その彼女を独占し
新婚生活を享受できる夫を羨む男性は
一人や二人ではなかった

馬鹿にしやがってぇっ!

「けっ・・・結局・・・
 おっ・・・お前はおっ・・俺のこと
 ばかっ・・馬鹿にしてやがるんだよっ・・・・・!」

哀玩ストア入店と時期をほぼ同じくして
幸絵は兄と慕った3つ年上の幼馴染と暮らし始めていた。

幸絵の決意

彼女自身
生涯消えない
一生の後悔となるであろう
忌まわしいあの一言を思い出す 

幸絵の
今の姿と生活は
その一言による失態を取り戻すためにある

”ああぁ・・・
  よ・・義(よし)兄ちゃん・・・
   ごめんなさいっ・・・・・”

あまりの猛省に
彼の慕わしい呼称が脳裏に蘇る

”申し訳ございませんでしたっ・・・
 同じ過ちを・・・
  また繰り返してしまう所でした。”

もう決して
取り繕った言葉やその場しのぎの言葉を
発してはならないことをあの時・・・

”そう・・あの時
  心に刻みつけたのでしょう蛆絵っ!
 本気で・・・本気で・・
  実行する気でお伝えしなればなりせん!”

その実行なくば
義春の誤解を得ることも
彼との和解も決して有り得ない

繕った言葉はもう述べません・・・!

”愛しい蛆絵生殺苛虐自在主様・・・
 もう蛆絵は・・・
  蛆虫蛆絵は決して・・・
   決して偽りの言葉を述べませんっ!
 人であること・・・
  家畜ですらないこと・・・
 蛆絵は心の底から
  真性マゾ蛆虫になりますっ・・・!”

いずれ人間生活を捨て・・・
生物としても過酷な環境に身を置くことを
幸絵は覚悟した

聞きたくない言葉

義春に促されるまま
自らの住いを
凡そ人らしからぬ場所を述べた幸絵に
義春は詰めり寄る

「てっ・・・適当なことっ・・・
  こと言うんじゃねぇっ・・・くっ・○そ蛆虫っ!」

”・・・・・・っ!”

義春が放つ憤りが
全裸の幸絵の肌にひしひしと伝わりくる

思惑に反して義春の機嫌を
知らず知らずに
損ねてしまう
自らの言動に幸絵は戸惑った

”ああ・・・考えなきゃ・・・
  考えなきゃ・・・
   何とか・・・愛しい
 愛しい蛆絵生殺苛虐自在主様の
   お気に召す言葉で
     気持ちをお応えしないと・・・。”

幸絵の焦燥など
お構いなく
義春は更に彼女に畳み掛ける

「はんっ・・・
  どっ・・・どうせ・・・・・・
   てっ・・適当に騙せばいいっ・・・
     おっ俺の・・・俺のことなんて・・・
 むっ・・務所(少年刑務所)を出た時から
   おっ・・・お前は・・・・
     そっ・・・そういう奴だものなっ・・・。」

”あっ・・・あああ”ああ・・
  決して・・・
   決してそのようなことは・・・”

決してそのようなことは・・・

彼が憎しみを込めて
漏らした言葉は
幸絵が最も耳にしたくは無いものだった

幸絵の棲家

糞虫のくせに・・・いい度胸・・・・

「さっ・・・殺虫駆除だぁぁ?
  いっ・・いい度胸してんじゃねぇか・・・?
   あぁん・・・便所虫のくせにいいぃぃっ?」

義春が声を凄ませ
幸絵に詰め寄る

ふっ・・踏み潰してやる・・・・っ

「ふっ・・・踏み潰して
  便所に捨ててやろうかっ!?」

”ああ・・・どうしたら・・・”

「ああんっ・・どっどうなんだっ!!」

語気を荒げる
義春に幸絵は怯えた

「は・・はいっ・・・あの・・
  わ・・私は・・蛆絵は・・・
   蛆絵は最下等マゾ便所虫ですから・・・
  くみ・・汲み取り便所で汚物に塗(まみ)れて
   棲まわせて頂くのが
    ふっ・・相応しいです・・・・。」

「ほっ・・・ほうっ・・
   い・・いいんだな・・・糞虫っ?」

義春の表情に
  冗談や嘘は感じられない・・・。

どうしたら良いのでしょう・・・・

”あああ・・・
  どうしたら・・・
   どうしたら良いのでしょう・・・・”

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ふぃがろです。
よろしくお願いします。

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