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幸絵032『クリスマスの葛藤』 思いがけないこと

普段のはつらつとした幸絵からは想像もつかない
自らを責めてほしいと叫ぶ声は
室山と滝沢の争いを止めるには
十分すぎる悲痛に満ちたものだった。

その幸絵に気をとられた滝沢の隙を
室山は見逃さなかった。

「そ・・・そうだよっ幸ちゃん、
 俺は幸ちゃんにその為に話が・・
 うがっ・・・!」

滝沢を押しのけようとする
室山の顔を滝沢が逆に押し返した。

「ゆ・・幸ちゃん、しゃ・・しゃがんでっ!
 そんなことないから・・・!」

「だっ・・だって、
 だって私の所為で・・・ううぅっ!。」

だって・・・

幸絵にとって人が言い争う姿は
何よりも辛く
恐怖すら覚えさせるものだ。

言い争いで
図らずも滝沢の口から
室山に彼らの陰口を伝えた形となってしまった
彼の悔しさを思うと
幸絵はいたたまれなかった。

しかし当の室山は
全く別の意図でそれを利用しようとしていた。
幸絵が興奮すればするほど、
彼女の露出が激しくなることを
彼は期待したのだ。

それは憶測ではなく
彼なりの確証があった。

先ほどまでは
まるで見えなかった幸絵が立ち上がったことにより
泣きじゃくった愛らしい顔と
その白い華奢な肩先までが見えたからだ。

”よおぉぉし、もう少しだっ・・・!”

会議室に注がれる
夕暮れ間近い光に照らされた
揺れる白い肌の輝きが
室山の興奮はもう留まることを許さない。

「僕が思うには・・
 やっぱり・・・
 幸ちゃんがもっとしっかりやってくれていれば・・・。
 こんなことには・・・!!」

ならなかったはずだ・・・とばかりに、
悔しそうな顔を室山は見せる。

「は・・・はいっ・・・、
 そ・・その通りです・・私が・・・私がっ・・・。」

室山の期待通り、
幸絵が自らの非を訴えながら
二人に近づこうとした。

なりふり構わず幸絵は
二人に謝ろうとしたのだった。

”こ、この男は・・・。”

自分の思惑通りになりそうだと淫らに輝く
好色そうな室山の視線から
彼の目論見を滝沢は窺い得ていた。

「だからさっ・・・
 僕は・・・!」

バシンッ!

「どわぁっ・・・!」

調子付いた室山をまたも、
滝沢は突き飛ばされた。

「幸ちゃんっ、しゃがみなさいっ!
 見えているわよっ・・・胸元っ・・・!」

見えているわよっ!胸元っ!!

「え・・・?」

幸絵は慌てて
自分の胸元を覗いた。

えっ・・・・

サンタ衣装を
力強く握りしめたばかりに
白い肌に浮かぶ刺青と
ピアスの片鱗が見えてしまっていた。

”ああっ、だめ・・っ!”

幸絵は胸元のサンタ衣装をたくし上げた。

「えっ・・む、
 胸元・・・っ?!」

室山も目敏く反応した。

「ど・・どきなさいっ!店長命令だっ!!!
 俺は、幸ちゃんに・・・っ!」

今度は押し返されないように
足を踏ん張りなりながら
前に出ようとする室山だった・・が・・・、
その時だった・・・、

「申し訳ありませんでしたっ、
 店長っ!
 私が悪うございましたっ!!」

滝沢が突然叫び、
その場で深々と頭を下げたのだった。

「えっ・・・!」

滝沢の突然の謝罪に室山も
そして幸絵も戸惑った。

「何も知らず
 申し訳ありませんでしたっ!
 どうか、協力をさせてくださいっ!」

「た・・滝沢さんっ・・・」

幸ちゃんはしゃがんでなさいっ!

「幸ちゃんは
 そこでしゃがんでいなさいっ!!!!」

「で・・でもっ・・・!」

滝沢は頭を下げたまま
手で幸絵を制した。

「しゃがんでっ!!!」

「はっ・・はい!」

その余りの大きな声に幸絵は
思わずしゃがみこんだ。

「店長、申し訳ありません・・・。
 どうか、私たちにも
 幸ちゃんを助けさせてください。」

室山の視線は
クリスマスケーキの箱の陰に隠れた
幸絵の姿を追っていたが
お構いなしに滝沢は続けた。

「店長が幸ちゃんを
 助けようとしていたことを
 知らず知らずとはいえ、
 邪魔をしてしまっていたんですね・・・。」

「え・・・?
 あ・・ああ・・・
 ま、まあそうだな・・・。」

室山の目の前の滝沢が邪魔であったが
頭を下げた彼女を押しのけることはできない。

「ありがとうございますっ!」

滝沢は頭を上げると共に
室山に向かって話を続けた。

「会場の準備は、私たちがしますから・・・。」

「え・・ああ、頼むよ、
 僕は幸ちゃんと話が・・・。」

滝沢は室山の言葉遮った。

「店長は
 幸ちゃんの話してくれた店長のアイデア、
 あれの張り貼り紙を作ってくださいますか・・・?」

「え・・っ?」

「ある程度の安売りは
 しなければならないけれど、
 さっきのお話・・・、
 あれでいけるかと思います。」

「え・・・?
 あ・・ああ・・あれね・・・。」

「そう・・あれです。」

「幸ちゃんの言ってたあれだよね。」

滝沢の言葉に会議室に入り、
初めて室山が彼女を凝視した。

「ええ・・・。」

大げさに手を振り、
室山は滝沢に伝えた。

「お・・俺、
 ほら、字が汚いし・・・。
 ねっ・・・知ってるだろ・・・?」

滝沢に媚びた笑顔を浮かべて
同意を求めた。

”やっぱり・・・”

滝沢は鎌をかけたのである。
慌てる様子の室山を見て
売れ残りのクリスマスケーキを単価設定をしたのが
幸絵であることを確信した。

「判りましたっ・・
 じゃ、それは私が書きますから、
 店長は現場の準備をお願いします。」

さすがに売り場主任を長年受け持ち
売れ残りの処理などは
お手の物の滝沢には幸絵のアイデアを理解していた。

「え・・・いや、
 あ・・・私は幸ちゃんと・・・
 やっぱり、
 あっ、そうだ幸ちゃんに書いてもらっ・・・」

「幸ちゃんは
 サンタ衣装に着替えてもらうんでしょ!?」

「え・・?
 あ・・・うん、そうなんだが・・・。」

歯切れの悪い室山に
滝沢が揶揄するように聞きなおした。

「それとも何ですか、
 やっぱり、幸ちゃんの生着替えを
 見ていたいんですかっ!?」

滝沢は
にやっと笑って
室山の顔をのぞき見た。

「そっ・・そんなわけないだろっ!?」

「じゃ、私が書きますっ!」

滝沢は室山の肩を掴んで
無理やりドアの方向に向かせた。

「さぁっ、いきましょっ!!」

方向転換した勢いのまま
滝沢は室山の背中を押していた。

「あ・・あの・・、
 わ・・私が至らないばかりに・・・
 ほんと、私がっ・・・!」

ドアに向かおうとする二人に幸絵は叫んだ。

室山と滝沢が再びいがみ合うのを
臆病なほどに恐れていたのだ。

背中を追い立てられる室山と押す滝沢の様子を
幸絵は不安な顔色をのぞかせていた。

その幸絵をみて
滝沢は優しく呟いた。

「まだ、
 言ってんの、
 そんなこと・・・。

 ”あなたはちっとも悪くない・・
  だから泣かないで。
  幸せがどんどん逃げていってしまうわ。”」

「え・・・?」

あなたはちっとも悪くない・・・。

幸絵は息を呑んだ・・・。
昔、確かにその言葉を聞いていたからだ。

”そう、それはあの時・・・”

えっ・・・ふ、婦警さん!?

”ふ・・婦警さん・・・
まさか、そんな・・・?”

忌まわしい事件があった幸絵達の故郷から
ここは遥か1000km以上も離れている・・・、
そうした土地を敢えて
幸絵は選んだのだ。

「ここの鍵、閉めておくわね、
 馬鹿な男が覗きに来ないように・・・。」

「だ・・誰のことだよっ!
 会場設置にいくよっ!」

滝沢の冗談めいた言葉に
捨て台詞を残し室山が、
ドカドカと足音を響かせて出て行った。

その様子を滝沢は苦笑を交えながら
くすっと微笑を浮かべ
自らもあとへ続こうと開いたままであった
ドアのノブを握った。

「あ・・あの・・・。」

幸絵は思わず、
ドアから出て行こうとしていた
滝沢に尋ねた。

「え・・何・・・?」

「あの滝沢さん・・・滝沢さんは、
 む・・昔、婦人・・・」

そこまで言いかけて幸絵は躊躇した。

「え・・昔、何・・?」

自分の勘違いかもしれない
既にあの事件から10年が過ぎている。

『少女強姦』と『級友殺害』・・・、

警察が駆けつけても
級友の死体の隣で少女を犯そうとしていた
極めて凶悪な未成年犯罪、
当時は少年法を見直すべきだとばかりに
全国的な社会問題にまでなった事件であった。

あの事件の記憶を再び
人々に思い出させたくはなかった。

”泣いていたら、
 幸せがどんどん逃げていく・・”

決して誰しもが
思いつかないというセリフではない。

「いえ・・・な・・
 何でもないです・・・。」

幸絵は目を伏せた。

「・・・変な、幸ちゃん・・・。
 じゃあ・・・」

滝沢はドアを閉めようとした。

「あっ・・でも・・・。」

「え・・・っ
 なっ・・なんでしょうっ!?」

幸絵はびくっと滝沢を見返した。

「それっ・・
 処理しておいた方がいいわよっ・・
 いくら、冬だからって女の子でしょ?」

「え・・?」

目立つわよ・・・

「目立つわよ・・・!
 意外と濃いのね・・情が深いのかしら・・
 うふふふ・・・」

滝沢の視線は幸絵の腋下を指していた。

「あ・・・
 は、はいっ・・・。」

顔を赤らめる幸絵を見ながら
”じゃ、待ってるわね”とドアを滝沢は閉めた。

「あ・・・
 た・・滝沢さんっ・・・!」

あ・・滝沢さん・・・

滝沢の返事は無く、
ガチャガチャと施錠したドアが
外から開かないことを
確認してくれている音が
幸絵だけが残った会議室に響いた。

遠い昔の記憶であり、
正直、婦警の顔かたちなどは
殆ど憶えていない。

無残な殺人事件と
惨めに護送されていく義春を見るに耐えず、
唯、がちがちと
歯を鳴らして震えていた幸絵だった。

”けれど・・・、
 けれど憶えている・・・。”

懐かしさのあまり
義春の後を尾行した自分の為に起きた惨劇。

その罪悪感に
押しつぶされそうになっていた
自分の肩をしっかり
そして優しく抱きしめて語りかけてくれた言葉。

”あなたは
 ちっとも悪くない・・
 だから泣かないで・・・
 幸せがどんどん逃げていってしまうわ。”

どんな時にも
笑顔でいようと思ったのは
その言葉があったからだった。

”あ・・あの時の
 婦警さんだったの・・・?”

滝沢が自分の過去、
そして今一緒に暮らしている
愛しい夫の過去を知っているあの婦警かもしれない。

しかも、あろうことか、
幸絵の秘密を見られてしまっていた。
恐らく胸に彫られた文字が
何と書かれているかが判ってしまったはずだった。

家畜妻・・・

”家畜妻・・・
 ど・・どんな風に思われたかしら・・・?”

決してまともな夫婦生活を
送っている夫婦とは思われることはないだろう。

まさか加害者と被害者、
その二人が今、一緒に暮らしているなどとも
夢にも思わないだろう。

いずれにしても
今までのようにストア勤めも
生活もままならなくなるだろう、
いや、それよりも・・・

”そうしたら、
 愛しい幸絵加虐生殺自在主様は・・・
 きっと冷たい好奇な視線に・・・”

幸絵の心はざわめきだった。

どうしよう・・・

”どうしよう・・・。”

漸く義春と静かに暮らせる環境を
手に入れた幸絵だった。

10年の服役を終えて出所した彼と
一緒に暮らし始めて半年、
女性として・・・
いや人として受け入れ難い辛くて
苦しかったこともあった。

けれども、
最下等変態マゾ家畜妻としての生活も
考え方にも
少しずつ慣れてきた矢先だった。

”痛いことも、苦しいことも・・・
 恥ずかしいことも
 本当は・・本当は・・・
 まだ辛いです・・・

 けれど、けれど・・

 愛しい幸絵加虐生殺自在主様に
 喜んで頂けるのなら
 私は・・・幸絵豚は心から
 嬉しいのです・・・。”

幸絵豚、昨夜の放置プレイ・・・

 いつか真性マゾに・・・
 貴女様のどんなに

 過酷な拷問にも耐えられる
 変態家畜妻になりたいんです・・・

幸絵は昨夜の放置プレイを思い出す。
正直なところ
義春は自分に全く心を開いていくれてはいない。

けれども幸絵にとって、
彼に文字通り
彼の望むマゾ家畜として
身命を掛け尽くすことの出来る
やっと幸せの入り口に立ったところだった。

その生活も自分たちの過去を知る人が
それを暴き立てたなら、
とても静かな二人の暮らしを続けることはできない。

”でも例え、婦警さんでなくても、
 滝沢さんが
 私の身体の秘密を
 他の店員さんたちにお話されたら・・・。”

幸絵は
胸を張り裂かんばかりの
不安に指を噛みしめた。

幸絵の思い描いた暮らし、
愛する夫に失わせてしまった家族を・・・
再び小さくても彼の子供を授かり
幸せな家庭を築くという
ささやかな夢が崩れ去るのを感じた。

”だめっ・・・”

幸絵は首を振った。

”だめだめ・・・!
 幸絵っ、そんな弱気でどうするのっ!?”

幸絵は再び大きく首を振り、
自分に言い聞かせた。

”そんなこと・・・
 そんなことにはさせない・・・。

 そう、
 泣いていたら・・
 泣いていたら・・・
 幸せが逃げて行ってしまうわ・・・。”

幸絵は無理やりに
笑顔を作ってみせた。

そして事件から乗り越えてきた
これまでのことを思い起こした。

暮らし始めの頃ははマゾ拷問に耐えられず
何度もすぐに音を上げて、
何昼夜も詫びを入れたこと。

どうぞ、苛めて下さいませ・・・

そう、つい一年前までは
今のこんな自分の姿も
今のような生活を思いも及ばなかった。

”乗り越えてきたじゃない・・・
 こんなこと、
 乗り越えられなくてどうするの・・・?”

そう、
幸絵は強い意志を持って
両親も友人も自分の今までの全てを捨ててまで
今の生活を手にしたのだ。

”滝沢さんを説得してみせる・・・
 例え、あの婦警さんだったとしても・・・。”

既にドアの向こうに去った
滝沢を追う視線を送りながら幸絵は思った。

”いえ、そうよ・・・
 ああ、むしろ、あの婦警さんだったなら・・・
 きっと・・なおさら・・・。”

そう、幸絵にとって滝沢がむしろ
あの婦警であってほしいとすら思えるようになっていた。

”かけがえのない
 お義母さまをなくしてしまったこと・・・”

かけがえのない御義母さま・・・

義春の母をなくした
押しつぶされそうな罪悪感は
義春が逮捕されたとき以上のものを
毎日のように幸絵は感じている。

繰り返して言う、
幸絵は義春に奉仕できる今を
決して不幸だとは思わない。

けれど・・・

打ち明けたい・・・

”打ち明けたい・・・
 今までのこと・・・これからのこと・・・。”

幸絵はいつしか
あの日、肩に触れた婦警の手のひらの暖かさと
今日、必死に幸絵の身体の秘密を
室山の目から隠そうとしてくれていた
滝沢の優しさを重ねていた。

そう、あの幸ちゃんが・・・

”そう・・
 あの幸ちゃんが・・・・・・”

------------------------------------------

<あとがき>

滝沢さん、どっちなんでしょうね???

SM調教チャット「館」さん
相互Link致しました。

ふぃがろ
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ふぃがろ

Author:ふぃがろ
ふぃがろです。
よろしくお願いします。

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